2022年8月12日

メイキング オブ 「ギルバートマニア」 ①
8月もお盆を過ぎると、夏も半分が終わったような気になります。以前は何となくそれが寂しかったのですが、今では早くこの暑さから解放されたい!という気持ちのほうがまさり秋を待ち望んでいるような毎日です

友人から送られてきたフィルムカメラで撮ったシングル盤のジャケット

8月の上旬は本の発送に追われていました。ご購入下さったみなさん、本当にありがとうございます。何人かの方より感想が届いて、みなさんほぼ同じことを書いて下さっています。みなさんが寄せていただいた感想で多かったのが「労作」という言葉でした。
ただ、苦労をしたのは私ではなく、他の方も大変な作業をして下さっています。今日はそのことを少しお話します。

私は今では音楽を聴くよりも本を読む方が好きかも知れません。そのくらい本を買うのですが、巷の本はそれこそ千差万別。それは内容もさることながら、その中身です。一日で読んでしまえる本もあれば何週間もかかる本もあります。決して一日で読める本が悪いわけではありません。読みやすさというのは大切な要因ですし、読みやすいから書いていることが易しいとは限りません。ただ読み終えたあと、ずいぶんいろいろなことが学べたな、知ることができたなという気持ちになる本と、ほとんど内容を覚えていないものに分かれます。つまり本当に中身のある本には読みやすさは別として内容の濃さが反映されています。

私は大学生のとき法学部に属していたのですが、ある先生が、当時私に必要な本を紹介して下さったことがありました。それでその本を大学の生協で買ったのですが、先生曰く「この本は一行一行に内容が詰まっている」とおっしゃっていた言葉が忘れられません。同じ1ページでも他の著者の本に比べると与える影響、触発する度合いが違うのです。

学生時代に買った英米法の本2冊。一行一行にその内容の濃さが滲み出ている本
学生時代に買った英米法の本2冊。一行一行にその内容の濃さが滲み出ている本

今回の本は、必ずしも一般書と比較できない部分もありますが、ページ数のわりに時間がかかっている箇所もあります。たとえば日本公演の曲目を書くところですが隠し録りしたテープを順に一日中ずっとかけて曲目を書いていく作業をしました。だから相当な時間がかかりました。2000年のところは実はすべてを聴ける状況になかったので一公演分の情報を掲載しています。仕上がるとたった4ページですが、かなり時間を食われた作業でした。もちろんこれを書くには私や友人がこれだけの公演に出掛けたから書けるのです。

ただ時間をかけたのは私だけではありません。これを言っておきたいのです。たとえばフォトギャラリーですが、シングル盤のジャケットを4ページに渡って紹介しています。私が持っている海外盤はせいぜいページ一枚分。今回のLPジャケット、シングルジャケットは大概スキャンしてデザイナーにギガファイル便で送る作業でしたが(これもデザイナーがずいぶんと手伝って下さったのですが)、この海外盤シングルはほとんどある友人が集めたシングル盤です。

以前ファン同士で定期的に会っていた話は本文でもしていますが、私を含め年月が経つにつれ、それぞれの事情で東京を離れた人も出てきました。東京に住んでいた時はお互いに手紙やはがきでこういうのが集まったと連絡し、ある程度の成果があったときにじゃあみんなで集まりますか、ということで数ヶ月ごとに集まっていたのです。その際、手に入れたものを、雑誌なら手に入れた人が人数分コピーし、それを会ったときにみなさんに渡す。品物なら写真に撮って写真を人数分配るということをしたのです。その癖が残っていたため、会えなくなっても何ヶ月かごとにお互いに送り合うということがその後数年続いていました。

今回、オサリバンのアイテムをひっくり返していたら、自分でも忘れていたものが見つかりました。その一つがシングルジャケットを撮ったこれらの写真でした。フォトギャラリーは私がデザイナーのところに写真を持っていき、デザイナーが一つ一つ並べていったのです。見ていただいただけではわからないと思いますが、大きさも少しですが違っていてマチマチで、中には若干下が切れているものもあります。それらは色を含め、大きさも揃える補正をしています。

フォトギャラリーは本の作業の中でも最後の方に行ったものですが、5月、6月は結構朝早くから本の仕上げにかかっていて、デザイナーと私はお互い午前4時台、5時台にほぼ毎日メールをし合っています。つまり朝起きたらすぐに作業にかかり、私が原稿を送ったあと、次の日の朝にこういうふうにできました、これでいいですか?というような感じで送り返してきます。お互いに日中は他の仕事があるので、仕事の前に平均して一日2~3時間、時には4~5時間作業してやりとりをするのです。朝4時台に原稿を直しているとデザイナーからメールが送られてくる。ああ、もう起きていらして朝早くから作業をしているんだな、申し訳ないなあ・・・と思うのです。

フォトギャラリーは全部でも10ページに満たないページ数ですが、海外盤を集めていた友人は少しずつオークションで十年以上かけて落札しています。何年もかけて集め、それを写真で私に送ってくれたのです。

友人から送られてきたフィルムカメラで撮ったシングル盤のジャケット
友人から送られてきたフィルムカメラで撮ったシングル盤のジャケット

もともとこういう本の制作のために送ってくれているわけではないので、デザイナーはこれらの写真を本の掲載用に手直しをしなければなりません。当然のことながらネットから拝借ということはできません。海外盤を見つけて競り落とし、手に入れて、ある程度数がたまったら写真に撮って送ってくれる。だからお金もかかっています。

まだデジカメが一般的になっていない過渡期でした。ですから撮ったのはアナログのフィルムカメラ。そこにデザイナーが手間暇をかけ、ようやく一ページが完成しています。

力作、労作と言って下さった方、本当にありがとうございます。でもこれは私だけではありません。最後に謝辞にある方々のおかげが実を結んでいます。

ですからこの本は私だけが作ったわけではありません。友人たちの協力があって実現したものです。